嘱託医とは?産業医との違いや業務内容・報酬相場を現場目線で徹底解説
現場の運用実態を取材すると、施設側と医師側の双方が抱える深刻なギャップが浮かび上がってきます。双方が「こんなはずではなかった」と後悔する構図は、制度理解の不足から生じています。
施設運営者・看護師側のリアルな証言
特養の施設長や主任看護師からは、嘱託医のフットワークに対する不満が噴出しがちです。
「月額の手当はお支払いしているものの、近隣でご自身のクリニックを開業されている嘱託医の先生の場合、日中の外来時間帯に急変が起きても電話すら繋がらないことがあります。結局、判断がつかずに救急車を呼んでしまい、搬送先から『なぜ施設の主治医がファーストタッチをしないのか』と苦言を呈される板挟みに悩まされています」(都内社会福祉法人・特養施設長)
嘱託医を引き受ける医師側の本音
一方、嘱託医を務める医師側にも、過重な負担に対する強い警戒感があります。
「月額十数万円の非常勤給料で契約したにもかかわらず、施設側は『24時間365日いつでも電話に出て駆けつけてくれる専従医』のように扱ってくるケースがあります。夜中の2時に『入所者様が熱を出した』と看護師から頻繁に起こされ、睡眠を削られる。これでは自身の診療所経営に支障が出ます。契約時にオンコールの責任範囲を線引きしておかなければ、精神的にも持ちません」(内科クリニック院長・嘱託医歴8年)
現場の不満の根底にあるのは、「業務委託の非常勤」という身分と「命を預かる主治医」という重責の乖離です。善意や慣習に頼った運用は、ひとたび重大なインシデントが発生した瞬間に破綻します。