宇宙の全原子数すら遥かに凌駕する「10の68乗」の彼方へ――2026年、最先端物理と情報工学が再発見した「無量大数」の衝撃
そして2026年。この悠久の数字が、最先端の研究所で突如リアリティを獲得した。引き金を引いたのは、千〜数万の物理量子ビットを制御可能にし始めた次世代量子情報科学だ。
量子ビットが織りなす「重ね合わせ」の状態数は、ビット数Nに対して2のN乗で跳ね上がる。わずか230量子ビットが連動するだけで、その状態空間の次元数は2の230乗、すなわち約1.7×10の69乗となり、あっさりと10の68乗の壁を突破する。数年前まで「理論上の玩具」と笑われていた超巨大数が、今やプロセッサ内部の位相空間において、日常的な設計パラメーターとして扱われている。
「私たちは今、自然界の物質を数えているのではない。宇宙の全素粒子数すら矮小に見える広大な『可能性の海』をナビゲートしている」
都内の量子コンピューティング拠点に詰める理論物理学者は、冷え切った希釈冷凍機の重低音を背にそう語った。暗号技術の解読シミュレーションや、複雑な生体分子のフォールディング予測において、研究者たちは日々、かつて仏僧たちが幻視した無量大数の断崖絶壁に爪を立てている。