早朝の路地裏に行列ができる理由。2026年、私たちが大手チェーンではなく「あの工房」へ走るわけ
物価高が生活を直撃する2026年において、1個500円から700円もするハード系のパンに行列ができる現象は、一見すると経済の矛盾に映るかもしれない。だが、買いに来る人々の声に耳を傾けると、その消費行動は極めて合理的であることがわかる。
「コンビニでなんとなく菓子パンを2個買って350円払うくらいなら、この工房のカンパーニュをハーフで買って、家でオリーブオイルとスープを合わせる。それだけで一日の食事が特別になりますから」
毎週土曜に並ぶという近隣の会社員はそう語る。贅沢の定義が変わったのだ。外食で何万円も浪費する代わりに、日常の延長にある確かな手仕事の結晶を食卓に迎える。腹を満たすためだけの炭水化物ではなく、心を満たす豊かな体験としてのパン。高くても本物を買いたいという生活者の選別は、かつてないほど冷徹で、かつ情熱的だ。