忘却とは脳のバグではない!記憶を消去して生存する驚きの脳科学

忘却とは脳のバグではない!記憶を消去して生存する驚きの脳科学にまつわる役立つ知識を分かりやすく発信ます。

記憶の司令塔として知られるのが、大脳辺縁系に位置する「海馬」です。私たちが日々体験する膨大な情報は、まず感覚器から大脳皮質を経て海馬へと送り込まれます。海馬の働きと記憶定着は、いわば情報の選別センターのような役割を果たしています。

海馬に入った情報は、一時的な記憶として短期保管されます。海馬はこのデータに対し、「生命維持に直結するか」「感情が大きく動いたか」「何度も繰り返し入力されているか」を精査します。選定基準を満たした重要情報だけが、大脳皮質の側頭葉などへ送られ、長期記憶として固定化されます。選ばれなかった無数の日常データは、海馬の段階で容赦なくスクラップ処理されます。

このプロセスを神経回路レベルで見ると、忘却と記憶想起の仕組みはシナプスの可塑性によって制御されています。記憶が定着する際は「長期増強(LTP)」と呼ばれる現象によって神経細胞同士の結合が強まります。一方、積極的忘却が働く局面では、特定の神経伝達物質やシグナル伝達によってシナプス結合が弱まる「長期抑圧(LTD)」や、不要なスパインの剪定(刈り込み)が実行されます。

想起する際には、残されたシナプスネットワークを通じて電気信号が再現されますが、痕跡が希薄化していたり、関連する別のネットワークからノイズが混入したりすると、脳は正しくデータを復元できなくなります。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。