馬酔木の読み方と猛毒の真相|万葉集の悲話と鹿が食べない理由を解説
「馬が酔う」という表現は決して比喩や誇張ではありません。馬酔木はツツジ科アセビ属の常緑低木であり、葉、茎、花、実、さらには蜜に至るまで、植物の全体に極めて強い毒性を秘めています。
主要な毒性成分は、ジテルペン化合物であるグラヤノトキシン(別名:アセボトキシン)やアセボプリン、ロドホモキシンなどです。これらの毒素は神経細胞のナトリウムチャネルに作用し、神経伝達を過剰に刺激・麻痺させる作用を持っています。
もし人間や動物が誤って口にした場合、以下のような重篤な中毒症状を引き起こします。
初期症状としては、激しい嘔吐、吐き気、下痢、腹痛、過度の流涎(よだれ)が現れます。毒素が体内に吸収されると、血圧低下、徐脈、めまい、知覚障害が起こり、最悪の場合は中枢神経の麻痺や呼吸停止に至る危険性があります。
かつて農村部では、この強烈な毒性を逆手に取り、葉を煎じた液体を「天然の殺虫剤」や蛆(うじ)殺しとして利用していた歴史もあります。家庭で庭木として鑑賞する分には触れるだけで害はありませんが、小さな子どもや好奇心旺盛な犬・猫が誤食しないよう、管理には十分な警戒が求められます。