福岡県立修猷館高校の真実|偏差値と合格ラインの裏にある強さの秘密
修猷館高校を語る上で欠かせないのが、生徒たちに与えられる広範な自由と、それに伴う厳格な自己責任の原則です。
まず制服と校則についてですが、同校にはいわゆる標準服(男子は伝統的な金ボタンのない詰襟、女子はセーラー服型)が存在するものの、私服通学が公認されています。染髪や装飾品についても細かく縛る規則は極力排されており、生徒自身の常識とTPOをわきまえた判断に委ねられています。校門での厳しい頭髪検査や持ち物検査などは一切行われず、スマートフォン等のデバイス利用についても教育的良識の範囲で生徒自身がルールを形成・運用しています。
この自治の象徴が、毎年秋に開催される「大運動会」です。修猷館の大運動会は教員の指示ではなく、生徒で組織される運動会執行部を中心に、企画立案から競技運営、巨大な看板製作、応援合戦の演出に至るまで生徒自身が数か月をかけて作り上げます。夏休み返上で準備に没頭する館生(修猷館の生徒)たちの姿は、学校周辺の西新界隈でも風物詩となっています。
この熱狂的な行事文化は、卒業生の手記やインタビューでも異口同音に「人生で最も濃密な時間だった」と振り返られます。ある卒業生は自著の中で次のように述べています。
「大人の介入を一切排除し、数百人の人間を動かして一つの巨大な構造物を完成させる。あの運動会で経験したリーダーシップと挫折、そして合意形成の泥臭い苦しみこそが、社会に出てからどんなビジネスフレームワークよりも役に立った」
しかし、この自由と熱狂は「影」の側面も内包します。行事に全精力を注ぎ込むあまり、夏場に受験勉強が一時的に手薄になり、現役時の秋口に模試の判定が急落する生徒が一定数現れます。「自由を謳歌した結果として浪人を選ぶ」というカルチャーがかつては半ば肯定的に語られた時代もありました。現在ではICTを活用した自学支援や補習体制が整備され現役合格率は改善傾向にあるものの、「周囲に流されず、自由の中で学習時間を自律して確保できるか」が決定的な分水嶺となります。