スクリーンに宿る「静寂の熱量」——伊藤歩が魅せる、デビュー30年目の深遠なる境地
40代に入り、彼女の演技は新たな成熟期を迎えている。近年出演したサスペンス作や人間ドラマでは、一見穏やかな日常の裏に潜む狂気や悲哀を、一切の過剰さを排して描き出した。大声で叫ぶわけでも、派手なリアクションをするわけでもない。ただ微かに震える指先や、焦点を少しずらした目線だけで、観客の心をつかんで離さない。
主演・助演を問わず、彼女が画面に入るだけで作品全体のトーンが引き締まる。年齢を重ねることを恐れず、シワや表情の変化さえも演技の糧とするその潔さが、近年の作品群における圧倒的な説得力を生み出している。