伊東四朗『おしん』過酷ロケの真相!喜劇役者を変えた名演技の裏側と現在
『おしん』の代名詞ともいえるのが、少女編の舞台となった山形県での過酷なロケーション撮影です。現代のCG合成や空調の効いたスタジオ撮影とは根本から異なり、役者陣は本物の風雪が吹き荒れる極限状態の中で芝居に臨んでいました。
当時、主人公・おしんの幼少期を演じた子役の小林綾子、母・ふじ役の泉ピン子、そして作造役の伊東四朗は、氷点下の吹雪の中で足袋履きや藁沓(わらぐつ)を履き、顔や手足を赤く腫らしながら撮影を続行しました。報道各社の当時の取材記録によると、あまりの寒さにセリフを喋ろうとしても唇が凍りついて動かず、スタッフがストーブで役者の顔を温めながらワンカットずつ撮り進める過酷さだったと伝えられています。
現場での伊東四朗は、役柄上では幼いおしんを怒鳴りつけ、時には冷たく突き放す厳しい父親を演じ切らなければなりませんでした。しかし、カットがかかった瞬間に見せる素顔は正反対でした。寒さに震える小林綾子を真っ先に自分の外套で包み込み、「綾子ちゃん、よく頑張ったね」「寒かっただろう」と優しく声をかけ続けたというエピソードは、小林綾子自身の手記や共演特番でも感謝とともに繰り返し語られています。
また、妻・ふじを演じた泉ピン子とは、互いに過密スケジュールと極限状態の中で魂をぶつけ合い、台本を超えた迫真の夫婦喧嘩や貧困の苦悩を表現。実生活でも親交を深め、後の日本のエンターテインメント界を牽引する強固な信頼関係がこの現場で築き上げられました。