シーサーペントの正体とは?目撃情報の真相と深海科学が暴く海の怪異
シーサーペントの歴史を紐解く上で、単なる民話や伝承と一線を画す決定的な契機となったのが、公的機関の乗組員や訓練を受けた軍人による精密な目撃証言の存在です。なかでも海洋史・生物学史の双方で最も議論を呼んできた事例が、1848年8月6日、イギリス海軍のコルベット艦「HMSデダラス号」が南大西洋で遭遇した事案です。
喜望峰からセントヘレナ島へ向けて航行中だった同艦のピーター・マックホエ艦長および当直将校らは、船に接近する異様な生物を発見しました。公式報告書によると、海面から約1.2メートル露出した頭部と首、水面直下に見え隠れする長さ18メートル以上の蛇状の胴体が、時速約20〜24キロメートルで船の脇を横切っていったと記録されています。艦長が海軍本部に提出したスケッチには、鋭い目つきとトサカ状の突起を持つ蛇型の怪獣が克明に描かれており、英国内のタイムズ紙をはじめとする大手紙を巻き込んだ大論争へと発展しました。
さらに時代を遡れば、1734年にグリーンランド開拓の父として知られる宣教師ハンス・エゲデが残した航海日誌にも、「船のメインマストよりも高く頭をもたげ、鯨のように潮を吹き、尾には鱗が生えた巨大な海の怪物」のスケッチが残されています。エゲデは極めて敬虔かつ冷静沈着な人物として知られており、嘘や誇張を弄する動機が皆無であったことも、この大海蛇目撃例の信憑性を高める根拠となっています。
20世紀に入ってからも、1915年にドイツの潜水艦U28がイギリス海峡で沈没させた汽船の爆発直後、吹き飛ばされた海中から体長約20メートルのワニに似た長大な四肢を持つ怪獣が飛び出したという艦長手記が残るなど、近代軍事記録の狭間にも怪奇な遭遇劇が刻まれ続けています。