坂本龍一の壮絶な闘病記と最後の調べ|日記が明かす命を削る創作
体力の限界が迫る中、坂本が自らの集大成として挑んだのがドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』だ。長男である空音央(Neo Sora)監督の手により、NHK放送センターの509スタジオで撮影された本作は、観客を一切入れず、坂本と1台のヤマハグランドピアノだけで繰り広げられる伝説的なコンサートフィルムである。
1日に数曲を弾くのがやっとという極限状態の中、渾身の力を込めて紡ぎ出された20曲。モノクロームの美しい陰影の中、鍵盤を叩く指先の震え、漏れ出る息遣い、ペダルが軋む微かな音までが集音されている。YMO時代の楽曲から晩年の静謐なアンビエントまで、彼が歩んできた音楽の旅路が濃密に凝縮されたこの作品は、まさに遺言とも呼ぶべき圧倒的な迫力を放つ。