本谷有希子『異類婚姻譚』芥川賞の衝撃!選評理由と現在の評価
芥川賞受賞作を皮切りに本谷作品の世界へ足を踏み入れるなら、彼女のキャリアを語る上で欠かせない本谷有希子の代表作も外せません。人間の醜悪さと愛おしさを同時に描き出す筆力は、初期から中期の名作群でも強烈に発揮されています。
まず挙げるべきは、第33回野間文芸新人賞を受賞した『ぬるい毒』です。自意識を持て余す女性と、彼女の生活に悪意なく介入してくる謎の男との心理戦を描き、人間の執着の恐ろしさを抉り出しました。また、大江健三郎賞を受賞した短編集『嵐のピクニック』では、日常が唐突に崩壊していくシュールな短編が凝縮されており、彼女のショートショート作家としての飛び抜けた才能を堪能できます。
戯曲作品『遭難、』や、映画化もされた長編小説『乱暴と待機』など、どの作品にも通底するのは「他者との距離の測りがたさ」という普遍的な問いかけです。