後遺障害認定のデメリットは嘘?損する噂の真相と示談金の落とし穴
後遺障害の申請を検討する際、被害者を最も不安にさせるのが「申請に伴う社会的・経済的な不利益」に関する噂です。ここでは、現場取材と法律実務に基づき、ネット上で広がる代表的な5つの誤解を検証します。
① 会社にバレて解雇や減給などの悪影響が出る?
結論から言えば、後遺障害等級認定を受けた事実が職場へ直接通知される仕組みはありません。自賠責保険や損害保険会社が被害者の勤務先に認定結果を報告する義務はなく、個人情報保護の観点からも厳重に管理されます。労働基準法上も、事故による後遺症を理由に不当解雇や不利益な配置転換を行うことは禁じられています。ただし、後遺症によって従前の業務が物理的に困難になり、自ら業務内容の配慮を申し出る過程で周知されるケースはあり得ますが、認定自体が不利益処分のトリガーになることはありません。
② 健康保険や生命保険の加入・保険料に悪影響がある?
公的な健康保険において、後遺障害認定を理由に保険料が上がったり資格を剥奪されたりすることは一切ありません。民間の生命保険や医療保険への新規加入時には過去の病歴・治療歴の告知義務がありますが、問われるのは「現在の健康状態や通院歴」であり、「後遺障害等級の有無」そのものではありません。すでに加入している保険の給付金請求においても、後遺障害の認定がマイナスに作用することは原則ありません。
③ 障害者手帳が交付されて社会的な制限を受ける?
「後遺障害」と「障害者手帳」を同一視している誤解が散見されます。後遺障害等級認定は「交通事故の損害賠償を算出するための自賠責保険基準(1級〜14級)」に基づく私法上の評価です。一方、障害者手帳(身体障害者手帳など)は「身体障害者福祉法」に基づく公的な行政福祉サービスを受けるための制度であり、根拠法令も申請先も完全に独立しています。交通事故で後遺障害等級が認定されたからといって、自動的に障害者手帳が交付されたり、戸籍や公的書類に記録が残ることはありません。
④ 示談交渉が長期化して生活費が困窮する?
後遺障害認定の審査期間(通常1〜3ヶ月程度、難件ではそれ以上)が加わるため、早期に示談を終わらせて示談金を受け取りたいと考える人にとっては、受取時期が遅れる点が精神的な負担になる場合があります。しかし、後遺障害部分以外の既払金(治療費や休業損害)は先行して支払われていることが多く、後述する被害者請求を活用すれば、認定と同時に自賠責保険金が即座に先払いで口座に振り込まれます。
⑤ 申請にかかる診断書費用が無駄になる?
医師に作成を依頼する後遺障害診断書の費用は、1通あたり5,000円〜15,000円程度が相場です。認定されればこの費用も損害賠償(必要経費)として相手方に請求できる場合が多いですが、万が一「非該当」となった場合は自己負担となります。この数千円〜1万円程度の出費が、実務上における数少ない直接的金銭コストと言えます。