介護認定調査員が辛い理由とは?家族クレームや特記事項の重圧と現場実態
なぜ調査員ばかりに不満の矛先が向くのか。その背景には、介護保険制度特有の「判定の二重構造」と、現代日本の家族が抱える閉塞感が複雑に絡み合っている。
要介護度は、調査員の入力データを全国一律の判定ソフトで処理する要介護認定の一次判定と二次判定を経て決定される。一次判定の結果と主治医意見書、そして調査員が書いた特記事項をもとに、各自治体の介護認定審査会(合議体)が最終決定を下す。調査員個人に等級を決定する権限は一切ない。しかし、申請者やその家族からすれば、「家に来たあの人」が唯一の可視化された窓口である。結果に対して不満が生じた際、認定調査員のストレスと人間関係は極限に達する。「あなたのせいで要介護2から要介護1に落とされた」「施設を追い出されたらどうしてくれるのか」という怒りの矛先が、決定権を持たない調査員一人へと集中してしまうのである。
家族社会学の観点から見れば、介護の限界を迎えた家族が抱く「罪悪感」や「将来への絶望」といった心理的葛藤が、防衛機制として他者への攻撃に転化している状態と言える。核家族化や老老介護が進んだ結果、家庭内で抱えきれなくなった介護不安の圧力弁として調査員が晒されているのだ。こうした制度と感情の緩衝材にされ続ける構造が、調査員のメンタルヘルスを急速に蝕んでいる。