アメリカンコーヒーとは?薄める誤解の真相とアメリカーノとの違い
「アメリカンを頼んだら、単にお湯で薄められたものが出てきた」という話を耳にすることがあります。インターネット上の口コミやQ&Aサイトでも長年議論されているトピックですが、お湯で薄める誤解と理由の背景には、昭和の高度経済成長期における喫茶現場のオペレーション事情が横たわっています。
大手コーヒーメーカー・キーコーヒー株式会社が公開している公式見解や歴史資料を紐解くと、本来のアメリカンコーヒーの定義は明確に「浅煎りで焙煎したコーヒー豆で淹れたコーヒー」と記されています。コーヒー豆は焙煎が浅いほど水分が残って硬く、色は淡いシナモン色からミディアムローストに仕上がります。この浅煎り焙煎豆の特徴は、苦味や重厚なコクが抑えられ、豆本来のフルーティーな酸味と透き通るようなクリアな飲み口が前面に出る点にあります。
それにもかかわらず、なぜ「お湯で薄める」というイメージが定着してしまったのでしょうか。最大の要因は、1960年代から1970年代にかけて急増した純喫茶の注文ラッシュにあります。当時、珈琲専門店では深煎りの中南米産ブレンド豆をストックし、サイフォンやネルドリップで濃密に抽出するのが主流でした。そこに「苦味が強すぎて飲めない」「もっと軽いものが飲みたい」という客からの要望が増加した際、浅煎り豆をわざわざ別に用意して専用ミルで挽く手間を省くため、手元の濃いレギュラーコーヒーにお湯を注いで提供する店が相次いだのです。
つまり、「お湯で割るアメリカン」は、現場の効率化から生まれた便法に過ぎません。正統派のアメリカンコーヒーとは、浅煎り豆ならではの繊細なフレーバーを引き出すために設計された、れっきとした独立メニューなのです。