ロンドン屈指の怪建築サー・ジョン・ソーンズ美術館の謎と見どころ完全解説
館内に足を踏み入れると、無数の展示品が壁や天井にまで隙間なく配置されています。その中でも絶対に外せない主要スポットを3つ紹介します。
1. 折りたたみ式の壁が展開する「絵画室(Picture Room)」
わずか数畳ほどの小さな部屋ですが、ここには驚くべきカラクリが施されています。壁面が蝶番(ちょうつがい)で開閉するパネル構造(Moveable planes)になっており、パネルを開くとその裏側や内壁から新たな名画が次々と現れます。これにより、通常の部屋の約3倍に相当する絵画が展示可能となっています。
ここでの主役は、18世紀の風刺画家ウィリアム・ホガースの代表作『放蕩一代記(A Rake's Progress)』連作8点および『選挙(An Election)』連作です。さらにパネルの最奥部には、ソーンの友人であったJ.M.W. ターナーの風景画や、修道士の部屋を覗き込むような隠し窓が仕掛けられており、スタッフが壁を開閉して見せてくれる瞬間は、館内随一のハイライトとなります。
2. 吹き抜けのドームエリアと「セティ1世の石棺」
地下へと続く吹き抜け空間「ドームエリア」には、古代の胸像やレリーフの石膏模型が重層的に積み重なるように配置され、中央の天窓から落ちる自然光が神秘的な陰影を作り出します。そして地下墓地(Sepulchral Chamber)の中央に鎮座するのが、古代エジプト第19王朝のファラオ「セティ1世のアラバスター製石棺」です。
この石棺は、発見後に大英博物館へ2000ポンドで売却が打診されたものの、予算不足を理由に見送られた逸話を持ちます。それを知ったソーンは即座に個人資金で購入を決断。自宅の壁を一部取り壊して地下へと運び込み、購入を祝して3夜連続でロンドンの名士2000人を招いたキャンドルライト・パーティーを開催しました。半透明のアラバスターに刻まれた緻密なヒエログリフは圧巻の迫力です。
3. 光と錯視の実験場「ブレックファスト・ルーム(朝食室)」
ソーンの建築的独創性が凝縮された空間が、13番地の朝食室です。浅いドーム型の天井が部屋の中央に浮遊するように設計され、天井の四隅やコーニスには無数の凸面鏡が埋め込まれています。自然光が鏡に反射して部屋全体に拡散し、狭い空間でありながら無限の広がりを感じさせる視覚的マジックが展開されています。