『からすのパンやさん』半世紀愛される理由と知られざる最新事情
巨匠・かこさとし(加古里子)氏が生み出した本作は、単なる可愛らしい動物の物語にとどまらない。福音館書店から刊行された当初から、子どもたちを「独立した人間」として対等に扱う独自の眼差しが貫かれていた。貧しいパン屋の夫婦が、4羽の赤ちゃんガラス(チョコ、リンゴ、レモン、オモチ)を育てながら、子どもたちのアイデアを取り入れて店を立て直していくプロセスは、力強い生活のエネルギーに満ちている。
社会心理学や工学の知見も持っていたかこさとし氏は、子どもたちが「自分で考え、選ぶ喜び」を本の中で疑似体験できるよう、工夫を凝らした。あの有名な「見開きいっぱいのパン」のページは、当時の常識を打ち破る緻密な描き込みによって作られたものだ。子どもの観察眼を決して舐めない誠実な創作姿勢こそが、50年を超えて愛され続ける最大の理由である。