『記憶の夜』結末と伏線の真相|兄の豹変と悲劇のトリックを徹底考察
本作のメガホンをとったのは、巧みなストーリーテリングで知られる名手チャン・ハンジュン監督です。主演には兵役入隊前の研ぎ澄まされた集中力で青年ジンソクを演じきったカン・ハヌル、そして優しさと冷酷さの二面性を完璧に演じ分けた実力派キム・ムヨルがキャスティングされました。
物語は1997年5月、浪人生である心優しい青年ジンソクが、両親と自慢の兄ユソクとともに閑静な住宅街の新居へ引っ越してくるところから幕を開けます。秀才でスポーツ万能、怪我によって左足が少し不自由な兄ユソクは、神経衰弱を患う弟ジンソクにとって絶対的な憧れの存在でした。
しかし、新居には不可解な空気が漂っていました。前住人の荷物が残されているという理由で、父から「絶対に開けてはならない」と厳命された2階の部屋。そこから夜な夜な聞こえてくる物音に、ジンソクは次第に精神をすり減らしていきます。そんなある雨の夜、目の前で兄ユソクが謎の男たちによって車で拉致される凄惨な事件が発生します。
警察の捜査も難航し、絶望に暮れる家族のもとへ、拉致から19日後に兄が奇跡的に帰還します。事件当時の記憶を完全に失っていたものの、家族は平穏を取り戻したかに見えました。だが、ジンソクは兄の微細な変化を見逃しませんでした。不自由だったはずの足が夜になると逆になり、深夜に部屋を抜け出して怪しげな男たちと密会する兄の姿。ジンソクの疑念は「この男は本当に自分の兄なのか」という底知れぬ恐怖へと膨らんでいきます。