『リメンバー・ミー』ガイコツの正体と死因|ヘクターの伏線と結末の真相
物語の最大の転換点であり、涙なしには見られないクライマックスを形作るのが、みすぼらしいガイコツ「ヘクター」の正体と、その身に起きた悲劇の真相です。当初、主人公ミゲルは祭壇の破られた写真に写るギターを手がかりに、国民的大スターであるエルネスト・デラクルスこそが自分の曾祖父(ママ・ココの父親)であると信じ切っていました。しかし、これは巧みに仕組まれた誤認でした。
ヘクターの正体は、エルネストの影武者などではなく、ミゲルの真の高祖父(ひいひいおじいちゃん)であり、ママ・ココの実の父親でした。家族を捨てて音楽を選んだ「薄情な男」として一族の歴史から抹消されていたヘクターですが、事実は全く正反対だったのです。
劇中で明かされるヘクターの真の死因は、エルネスト・デラクルスによる毒殺でした。生前、ヘクターはエルネストと共に音楽の巡業に出ていましたが、故郷に残した最愛の妻イメルダと幼い娘ココを思うあまり、音楽活動を辞めて家庭へ帰る決断を下します。しかし、ヘクターの類まれな作詞・作曲の才能なしにはスターになれないと悟ったエルネストは、別れの乾杯の酒に毒を混入。ヘクターは激しい腹痛に倒れ、家族のもとへ戻ることなく異郷の路上で命を落としました。
エルネストは、ヘクターが倒れた隙に彼が家族のために書き留めていた「楽曲ノート」と愛用の「白と黒のドクロギター」を盗み去り、それらを自作と偽って富と名声をほしいままにしていたのです。ヘクター自身は死の瞬間まで「チョリソーにあたって食中毒で死んだ」と思い込まされており、死者の国でエルネストの悪行が暴かれるまで、自らの死の真相すら知らされていませんでした。
本作における伏線回収の緻密さは圧巻です。デラクルスの主演映画で語られるセリフ、ヘクターの金歯とギターのヘッドに刻まれたドクロの意匠の一致、そして何より世界中を熱狂させた名曲『リメンバー・ミー』が、商業的なヒットソングではなく「父ヘクターが幼い娘ココのためだけに歌った極上の子守唄」であったという事実。すべてのピースがはまった瞬間、観客の心に押し寄せる感動は計り知れません。
なお、日本語吹き替え版においてヘクターの声を担当したのは俳優の藤木直人氏。飄々とした中に潜む哀愁と娘への切ない愛情を繊細に演じ分け、映画のドラマ性を一層引き締めました。一方、稀代の詐欺的スターであるエルネスト・デラクルス役を演じたのは舞台俳優の橋本さとし氏であり、その圧倒的な歌唱力と傲慢なカリスマ性が見事なコントラストを生み出しています。