モズのはやにえに隠された驚愕の真相!残酷な串刺し行動の本当の理由
秋風が吹き始める10月頃、甲高い「キチキチキチッ」という鳴き声(モズの高鳴き)とともに、縄張りを主張するモズの姿が見られます。この時期に急増するのが、獲物を木の枝や棘に突き刺す「はやにえ」行動です。かつては「冬を越すための保存食」あるいは「捕らえた獲物をうっかり忘れてしまったもの」と解釈されることが一般的でした。
しかし、大阪公立大学(旧・大阪市立大学大学院)の西田有佑特任助教および北海道大学の高木昌興教授らによる研究チームが発表した学術論文(国際学術誌『Animal Behaviour』掲載)によって、その決定的な生態の謎が解き明かされました。研究チームが野外のモズの行動を長期にわたって追跡・検証した結果、はやにえの消費パターンとオスの繁殖成功率の間に、極めて密接な因果関係が存在することが判明したのです。
モズのオスは、秋に作ったはやにえを真冬の間はほとんど食べずに保存し、繁殖期直前の1月から2月にかけて集中的に消費します。この厳冬期に高カロリーな動物性タンパク質を補給して栄養状態を最高潮に高めたオスは、求愛の際に「早口で複雑な歌(シラブル数の多い高密度な求愛ソング)」を長く力強く歌い上げることが可能になります。実験によって、はやにえを人為的に取り除かれたオスは歌のテンポが低下し、逆にはやにえを十分に食べたオスは歌の質が劇的に向上することが実証されました。
メスはオスの歌の巧みさや速さを聴き分けて「このオスは過酷な冬を乗り越える高い狩猟能力と体力を持っている」と判断し、つがい相手を選びます。つまり、残酷に見えるはやにえは、「春の婚活を有利に進め、自らの遺伝子を次世代に残すための勝負飯」という高度な進化生態学的意味を持っていたのです。