宮藤官九郎『季節のない街』が放つ圧倒的熱量と名作の裏側
本作を語る上で欠かせないのが、日本映画界・演劇界のトップランナーたちが結集したキャスト陣の驚くべきアンサンブルです。
心に傷を抱え、斜に構えながら街にやってくる主人公・半助を演じるのは池松壮亮。感情を押し殺した佇まいから、徐々に街の熱気に巻き込まれていく心の機微を、最小限の表情変化で繊細に表現しています。
そして、街の青年部を率いるタツヤ役の仲野太賀の存在感は圧巻の一言に尽きます。だらしない母親と引きこもりの兄を養いながら、空回るほどの正義感と人間味を炸裂させる芝居は、まさに仲野太賀の真骨頂。半助、タツヤ、そして純朴な酒屋の息子オカベ(渡辺大知)の3人が織りなすトリオの掛け合いは、劇中で抜群のリズムを生み出しています。
さらに、自らを電車の運転手だと信じ込み、毎日欠かさず街を「運行」する六ちゃん役の濱田岳、過酷な環境で心を閉ざしながら生きるかつ子役の三浦透子、怪しげなホームレス親子を演じた又吉直樹と大東駿介、坂井真紀、MEGUMI、荒川良々、岩松了、鶴見辰吾といった名優たちの怪演が、画面の隅々にまで生命力をみなぎらせています。
これら個性あふれる登場人物たちの息遣いに寄り添うのが、音楽監督・大友良英が手掛けた劇伴です。アコースティックでどこか泥臭く、それでいて祝祭感に満ちたホーンセクションの響きは、街の住人たちの鼓動そのものとして機能しています。