『鬼滅の刃 無限城編』が突きつける人間性の深淵——猗窩座の記憶が2026年の観客を揺さぶり続ける理由
鬼となった猗窩座は、人間時代の記憶を何ひとつ覚えていなかった。しかし、彼の身体と血肉は、愛した者たちの面影を過酷なまでに刻み続けていた。
彼の血鬼術「破壊殺」の羅針(らしん)。その陣の形は、小雪が髪に飾っていた雪の結晶そのものだ。技の名前に付けられた「乱式」「滅式」「脚式」といった名称は、江戸の空に打ち上がったあの日の花火の銘柄や情景と奇妙に合致する。
そして何より、彼が好んで使っていた桃色の拳の色は、小雪の着物の色であり、桃色の髪は彼女の頬の赤みでもあった。記憶は消えても、魂は小雪を守るために編み出した技を使い続けていたのだ。このあまりにも切ない伏線の回収に、2026年の今、改めてアニメーション映像で直面した観客たちの慟哭が止まらない。