なぜ『2億4千万の瞳』は色褪せないのか?国民的アンセムの真実
本作の重要性は、その音楽的なハイブリッド構造にもある。1980年代初頭の日本の音楽産業は、伝統的な歌謡曲のフォーマットから、より洗練されたニューミュージックや後のJ-POPへと移行する過渡期にあった。
売野雅勇のソリッドな言葉選びと、井上大輔による洋楽直系のグルーヴ感。この黄金コンビによるサウンドデザインは、歌謡曲特有の情緒的な歌い回しを排し、ビートとシンクロするタイトなボーカルスタイルを要求した。郷ひろみはその難題に真っ向から挑み、鋭いリズムのキレと艶やかなハイトーンボイスで見事に昇華してみせた。
ブラスロックのダイナミズムとダンスビートの融合は、まさにJ-POPの夜明けを告げる狼煙だった。ポップスとしての親しみやすさを保ちながら、同時代の洋楽ヒットに引けを取らないプロダクションクオリティを達成した点において、日本のポップミュージック史の転換点と評されるのも当然と言える。