『火垂るの墓』蛍が象徴する衝撃の真実とポスターに隠された光の正体
親戚の叔母の家を飛び出し、横穴の防空壕でふたりきりの生活を始めた清太と節子。暗い壕の中に蚊帳を吊り、捕まえてきた無数の蛍を放ち「天国みたいやな」と歓喜するシーンは、本作屈指の名場面として知られています。
高畑勲監督はこのシークエンスにおいて、兄妹が作り上げた「社会から遮断されたかりそめの楽園」を描き出しました。蚊帳という薄い布一枚で外の世界と隔絶された空間は、清太にとって誰にも邪魔されない純粋無垢な城でした。しかし、その内部で放たれる蛍の淡い光は、外の現実世界を直視することを拒んだ清太の逃避行動の象徴でもあります。
光り輝く空間は一晩しか持たず、翌朝にはすべての蛍が無残に命を落として蚊帳の底に転がることになります。美しい幻想に溺れ、他者との関わりを絶った代償として訪れる破滅への予兆を、監督は極めて冷徹なリアリズムを交えて映像化しました。