医学博士とは?医師免許なしでも取得できる真相と不要論の現実

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ネット上の掲示板やSNSで定期的にトレンド入りする「医学博士 意味ない」という言説。この不要論が強まった背景には、日本の医療供給体制が直面している構造改革と、現場医師のリアルなキャリア意識の変化があります。

かつての大学医局制度全盛期(昭和から平成初期)において、医学博士は「医局員が一人前として認められ、関連病院の部長職や院長職へ出向するための必須通行手形」でした。論文を一本仕上げて博士号を取得しなければ、医局人事の中で冷遇されるケースが少なくありませんでした。

しかし、2018年度から本格導入された「新専門医制度」が定着したことで潮目は一変しました。地域の民間病院やクリニックが医師を中途採用する際、最重要視するのは「難関な手術を安全に執刀できるか」「専門外来を滞りなく回せるか」という臨床実践力です。求人票の応募条件にも「消化器病専門医」「循環器専門医」といった資格名が並び、「博士号保持者優遇」と記載されるケースは一部の公的基幹病院を除いて激減しました。

さらに、医師の働き方改革(時間外労働の上限規制)が施行されて以降、臨床医と医学博士の必要性を巡る葛藤はピークに達しています。若手専攻医は「過酷な臨床現場で専門医の症例数を稼ぐこと」と「深夜や休日に実験室へ通いマウスの世話やデータ解析を行うこと」の板挟みに遭っています。自らの健康とプライベートを削って大学院に数百万円の学費を納めながら、手に入るのは「名刺の肩書」だけという現実に直面し、「臨床一筋で生きていくなら学位取得は割に合わない」と判断する若手が増加したのが実態です。

年収面での皮肉も不要論に拍車をかけています。大学病院に籍を置いて研究に没頭する助教・助手の基本年収は、30代中盤でも600万〜800万円台に留まるケースが多く、アルバイト(当直バイト)で補填しなければ生活が成り立ちません。一方で、大学院へ行かずに初期研修修了後すぐ市中病院へ勤務した医師は、30代前半で1,500万円前後の高給を得ています。「学位を取った人間の方が年収が低い」という経済的逆転現象が、不要論の強力な根拠となっているのです。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。