定格電流とは何か?許容電流との違いや超えた危険・計算方法を徹底解説
「定格電流を少し超えて使っていても、ブレーカーも落ちないし電化製品は動いている」――。ネット上の知恵袋やSNSでも頻繁に見かけるこの言説こそ、電気火災を引き起こす最大の盲信です。では、定格電流を超過した回路の内部では、一体何が起きているのでしょうか。
ジュール熱の二乗則がもたらす熱暴走
導体に電流が流れると熱が発生します。この熱量は物理法則である「ジュールの法則」に厳密に従います。
発熱量(Q) = 電流(I)² × 抵抗(R) × 時間(t)
注目すべきは、発熱量が電流の2乗に比例して跳ね上がるという点です。電流が定格の1.2倍に増えると、熱量は1.2倍ではなく「1.44倍」に膨らみます。定格の1.5倍の電流を流し続ければ、発生する熱量は「2.25倍」へと跳ね上がります。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)や各地の消防局が公開している火災再現実験のデータでは、定格電流15Aの延長コードに20Aを超える電流を流し続けた場合、内部の銅線温度は短時間で100℃を超過します。外装の軟質塩化ビニル被覆は耐熱温度が約60℃に設定されているため、徐々に軟化し、やがて炭化して被覆が破れ、短絡火花を散らして周囲の可燃物に着火します。
前述の通り、ブレーカーは定格の125%程度の過電流では数十分間落ちない設計になっています。つまり、「ブレーカーが落ちていない状態」であっても、壁の中の配線やテーブルタップは限界を超えて発熱し続け、すでに発火への秒読み段階に入っているケースが現実の火災現場では極めて多いのです。