フェルマーの小定理とは?証明の謎とRsa暗号を支える神髄を徹底解剖

フェルマーの小定理とは?証明の謎とRsa暗号を支える神髄を徹底解剖について重要なポイントを解説いたします。専門家の見解をお届けします。

ピエール・ド・フェルマーは、大学教授や研究所に籍を置く職業的数学者ではありませんでした。彼の本職はトゥールーズの高等法院で参事官を務めた高級官僚、すなわち法服貴族の法律家です。裁判業務という極めて厳格な激務の合間、夜な夜な古典ギリシャの数学書を読み耽り、余暇の知的遊戯として数論に没頭していた「孤高のアマチュア」でした。公刊を嫌い、発見した定理を仲間の学者たちへ挑戦状のような書簡で送りつける風変わりなスタイルは、当時の学界を大いに刺激しました。

フェルマーの小定理が初めて文書として登場したのは、1640年10月18日に友人である文人フレニクル・ド・ベシーへ宛てた書簡の中です。この中でフェルマーは「ある素数 $p$ が $a^{p-1} - 1$ を割り切る」という命題を提示しつつ、「論述が長くなりすぎるのを恐れるため、ここには証明を書かない」と記しました。フェルマーの悪癖ともいえる「証明の省略」はここでも発揮され、完全な厳密証明が活字となったのは、およそ1世紀後の1736年、大数学者レオンハルト・オイラーの手によってでした。

一般の読者が最も混同しやすいのが、世界的なベストセラー書籍でも知られる「フェルマーの最終定理」との違いです。小定理が「素数を法とする合同式と剰余の性質」を扱う平易かつ普遍的な基礎命題であるのに対し、最終定理は「$x^n + y^n = z^n$($n \ge 3$)を満たす自然数解は存在しない」という不定方程式の難問です。最終定理はアンドリュー・ワイルズによって1995年に完全解決されるまで350年以上を要しましたが、小定理は初等的な整数論の枠組みで完全に証明が完結します。両者は難易度も対象領域も全くの別物です。

佐々木 一輝

佐々木 一輝

ビジネス戦略アナリスト

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。