さるかに合戦のあらすじと原作の結末|改変された理由と残酷な真相
昔話の『さるかに合戦』を語る上で避けて通れないのが、文豪・芥川龍之介が1923(大正12)年に発表した短編小説『猿蟹合戦』の存在です。芥川はこの痛快な仇討ち劇の「その先」に冷徹なメスを入れ、近代社会の法制度と大衆心理のグロテスクさを容赦なく暴き立てました。
芥川版のあらすじは、猿を討ち取った直後から始まります。カニと仲間たちは仇討ちを果たして歓喜に沸いたのも束の間、駆けつけた警察官によって全員が現場で即座に逮捕されてしまいます。適用された罪状は「謀殺罪(計画的殺人)」でした。
法廷において、猿は私有財産の柿を正当に収穫したに過ぎず、カニへの投擲も過失の域を出ないと弁護される一方、カニ側は綿密に凶器を用意して待ち伏せを行った「凶悪なテロリスト集団」として断罪されます。新聞などのマスメディアは猿への同情論を煽り立て、カニたちを冷酷な殺人者としてバッシングしました。その結果、下された判決はあまりにも非情なものでした。
主犯であるカニは死刑宣告を受け、絞首台へ送られます。共犯として加担した栗、蜂、臼は無期徒刑(終身刑)に処されるという絶望的な結末を迎えるのです。芥川はこの作品を通じて、「正義の名の下に行われる私刑(リンチ)の危うさ」と、「法律という近代システムの前では、情状酌量の余地なく弱者が圧殺される不条理」を強烈なブラックユーモアを交えて描き出しました。昔話を単なる子供向けの寓話から、高度な社会風刺劇へと昇華させた傑作として、いまなお文学界で高い評価を受けています。