コアラ絶滅危惧の真相|森林火災とクラミジア禍が招く2050年消失危機

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日本国内のインターネット上やソーシャルメディアでは、コアラの生態や保護に関して、悪意はなくとも事実と異なる言説が独り歩きしている場面が散見されます。正しい理解と支援を行うために、広く信じられている3つの誤解を是正しておく必要があります。

誤解①:「コアラはユーカリの木をたくさん植林すればすぐに回復する」
これは最も典型的な思い込みです。前述の通り、コアラは自生する特定の樹種の、さらに樹齢や葉の品質を見極めて採食します。ただユーカリの苗木を植えても、コアラが利用できる豊かなキャノピー(樹冠)に成長するまでには最低でも15年から20年以上の歳月を要します。既存の原生林を伐採した代替として別の場所に植林を行っても、直ちに失われた生息地の代わりにはならないのが生態学の現実です。

誤解②:「オーストラリア全土で均等にコアラが激減している」
実は、オーストラリア南部(ビクトリア州やカンガルー島)の一部地域では、天敵が少なく保護政策が功を奏した結果、局所的な過密状態(オーバーポピュレーション)が生じ、ユーカリを食べ尽くして森を枯死させてしまう問題が発生しています。一方、東部(クイーンズランド州・ニューサウスウェールズ州)では絶滅の危機に瀕しています。このように地域によって個体群動態が極端に二極化しているため、「コアラ全体が増えているのか減っているのか」という乱暴な一括りの議論は実態を見誤らせます。

誤解③:「抗生物質を使えばクラミジアは簡単に根絶できる」
人間であれば抗生物質の内服で比較的容易に治療できるクラミジアですが、コアラにとっては諸刃の剣です。ユーカリの毒素を解毒・発酵分解する特殊な腸内フローラ(細菌叢)を持つコアラは、強力な抗生物質によって腸内細菌が死滅すると、仮に感染症が治癒してもユーカリの栄養を吸収できずに衰弱死するリスクを常に抱えています。この生物学的制約こそが、野生集団における治療と制圧を極めて困難にしている最大の壁です。

山崎 陸

山崎 陸

ガジェット&アプライアンスライター

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