神田ミルクホールの系譜を追う|栄屋閉店の真相とレトロ喫茶の現在地
神田のミルクホール文化を昭和・平成、そして令和の初頭まで体現し続けたのが、1945年(昭和20年)創業の「栄屋ミルクホール」(千代田区神田多町)でした。木造瓦葺きの風情ある外観、看板建築の佇まいは、まるでタイムスリップしたかのような錯覚を与える神田の名所として親しまれていました。
しかし、2026年10月8日、同店は76年の歴史に静かに終止符を打ちました。突然の一報は全国のレトロ建築愛好家やグルメファンに大きな衝撃を与えましたが、その閉店理由は千代田区が進める都市計画道路(神田警察通り等)の整備事業に伴う立ち退きでした。建物の老朽化に加え、街全体の再開発という不可逆な都市の更新が背景にあったのです。
閉店当時、多くのファンから「どこか別の場所で移転再開してほしい」という切実な声が寄せられました。しかし、店主の高齢化や設備移転に伴うコスト、そして創業の地である神田多町のあの木造空間だからこその味わいという点から、現時点で移転や再オープンの具体的な計画は進んでいません。現在、跡地周辺は道路拡幅や近代的なビルへの建て替えが進み、往時の面影は写真や人々の記憶の中に留められています。