矢沢永吉「止まらないHa〜Ha」タオル投げの真相と伝説の誕生秘話
本作の爆発的な推進力を生み出している決定的な要素が、名作詞家・ちあき哲也による言葉の力です。『YES MY LOVE』や『黒く塗りつぶせ』など、矢沢の黄金期を支える名作を数多く手掛けたちあきは、矢沢の内面にある「乾き」と「疾走感」を最も的確に言語化できる稀代の表現者でした。
歌い出しの「乗ってくれ Ha〜Ha」から始まるリリックは、一見するとシンプルなパーティーロックの体裁を取りながら、その深層には強烈な反骨心と音楽への執着が描かれています。「生まれてから ビートの虜」「この俺に とり憑いた 悪魔でも 天使でも」という一節には、貧困と孤独から這い上がり、ただロックンロールだけを信じて頂点へと駆け上がってきた矢沢自身の生き様が色濃く投影されています。
当時の制作現場を知る関係者の証言によると、デモテープを受け取ったちあきは、矢沢がスキャットで口ずさんでいた仮歌のグルーヴを一切殺さず、母音の抜け感や子音のアタック感を徹底的に計算して日本語を当てはめたと伝えられています。「むかつきを いらつきを」「魂に 身をまかせ」と畳み掛けるフレーズは、日常に鬱屈を抱える聴き手にとって、まさに魂の叫びを代弁する解放のトリガーとなったのです。