一尺の長さは何センチ?曲尺と鯨尺の決定的な違いと簡単換算法を徹底解説
一尺の長さを調べる際、最初に突き当たる最大の疑問が「基準によって長さが違う」という事実です。現在、日本で流通している尺には明確に異なる2つの体系があります。
ひとつは、大工道具の直角定規(指矩)に刻まれている曲尺(かねじゃく)です。曲尺における一尺は正確に10/33メートル(約30.303cm)と定義されています。古代中国から飛鳥時代の日本へ伝来し、聖徳太子が法隆寺を建立した際にも用いられたと伝わる、日本の建築・土木・工芸の骨格を成す寸法です。
もうひとつが、呉服や和裁の世界だけで使われる鯨尺(くじらじゃく)です。鯨尺における一尺は25/66メートル(約37.879cm)。曲尺の一尺と比較するとちょうど1.25倍(2割5分増し)の長さになります。「鯨」という名の由来は、かつてクジラのヒゲ板を削って弾力性に富む狂いの少ない物差しを作っていたことにあります。
なぜ布を測るためだけに、建築用より約7.6cmも長い特別な尺が生まれたのでしょうか。江戸時代の度量衡史を専門とする研究者や老舗呉服問屋の記録によると、布地特有の物性と生活の知恵が深く関わっています。木材と違って柔らかい織物は、引っ張り方や湿度によって伸び縮みします。さらに着物は布地を一切裁ち落とさず、縫い代を内側に折り込んで仕立てるため、裁断時に遊び(余裕)を持たせる必要がありました。そこで、曲尺よりも一回り大きな基準を布専用として定着させたのです。
江戸時代、徳川幕府は享保の改革において曲尺を公認の基本尺としつつも、呉服業界で広く浸透していた鯨尺を「布地専用の例外」として追認しました。明治24年(1891年)公布の度量衡法でも「鯨尺の一尺は曲尺の一尺二寸五分に等しい」と法的に明文化され、用途に応じた2つの基準が今日まで受け継がれています。