完全房室ブロックの真実|突然死リスクとペースメーカー治療の全貌
心臓の送電線が途切れてしまう背景には、単一ではない多様な器質的心疾患や全身性疾患が潜んでいます。
最も頻度の高い要因は、加齢に伴う刺激伝導系の線維化・石灰化(レネゲール病・レブ病)です。血管や関節が年齢とともに硬くなるのと同様、心臓内の微細な伝導路も長年の拍動によって変性し、電気を通しにくくなります。高齢化が加速する日本国内において、完全房室ブロックの発症率が70代以降で急増するのはこのためです。
一方、急性あるいは特定の基礎疾患に伴って発症するケースも見逃せません。
- 急性心筋梗塞:特に右冠動脈の閉塞により下壁心筋梗塞を起こした場合、房室結節を栄養する血管が途絶し、急激に完全房室ブロックを合併します。
- 心臓サルコイドーシス:原因不明の肉芽腫が心筋や刺激伝導系に形成される難病で、比較的若い世代(40〜60代)におけるブロックの重要原因として注目されています。
- 心筋症・心筋炎:拡張型心筋症やウイルス感染による心筋の炎症が伝導路を破壊します。
- 医原性・薬剤性:心臓手術後の合併症や、β遮断薬・カルシウム拮抗薬・ジギタリス製剤などの抗不整脈薬の過剰効果によって誘発される場合があります。
原因が可逆的なもの(薬剤性や一時的な電解質異常)であれば投薬中止等で回復する見込みもありますが、加齢変性や心筋の線維化による器質的病変の場合、自然治癒することは医学的に期待できません。