空を覆う悪夢「蝗害」の謎を追う!生態激変の真相と歴史の教訓

空を覆う悪夢「蝗害」の謎を追う!生態激変の真相と歴史の教訓の特集記事をご紹介します。役立つ情報が満載です。

漢字で「飛蝗」と書き、「ひこう」あるいは「ばった」と読まれるこの昆虫群は、日常で見かける一般的なバッタとは決定的に異なる性質を秘めています。すべてのバッタが蝗害を引き起こすわけではなく、バッタ科の中でもごく限られた種だけが、周囲の生息密度に応じて体型や行動を劇的に変化させる「相変異(そうへんい)」という特殊な能力を持っています。

通常、個体密度が低い環境で育ったバッタは「孤独相(こどくそう)」と呼ばれます。体色は周囲の植物に溶け込む鮮やかな緑色や目立たない褐色をしており、性格は極めて臆病で、他の個体を避けて単独で生活します。翅(はね)は短めで長距離を飛ぶのには適していません。

ところが、干ばつの後の降雨などで植物が一気に繁茂し、一時的に爆発的な繁殖が起きた後、乾燥によって狭い緑地に高密度で幼虫が閉じ込められると、状況は一変します。幼虫同士の後ろ脚にある感覚毛が互いに頻繁に接触し合う刺激が引き金となり、体内の神経伝達物質「セロトニン」が急激に分泌されます。この刺激が遺伝子発現を変化させ、次に脱皮した個体はまったくの別種のような「群生相(ぐんせいそう)」へと変貌を遂げます。

群生相化したバッタは、警戒色の黒や黄褐色へと体色が変色し、胸部が引き締まり、長距離飛行に耐えうる長くて強靭な翅と発達した筋肉を持ちます。さらに心理的・行動面でも、仲間を求めて集団を形成し、極めて攻撃的で貪欲な食欲を示すようになります。これが、制御不能な大群が生まれる生物学的な発生理由です。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。