山田純嗣の美術世界:名画のジオラマ化から北欧ドライポイントへの変遷
キャリアを重ねた山田は、表現の領域をさらに広げる挑戦に出た。2024年、彼は北欧の地・フィンランドに滞在。そこで遭遇した豊かな自然環境と静寂は、彼の技法に劇的な変容をもたらした。
東京・不忍画廊で開催された個展「Junji Yamada -Metsä-」で発表された作品群は、従来のジオラマ+写真技法とは一線を画していた。
1本のニードルが刻むミニマルな静寂
「Metsä」とはフィンランド語で「森」を意味する。ここで彼が選んだのは、銅板に1本の金属針(ニードル)で直に線を刻み込むドライポイント技法だった。
重層的な工程を削ぎ落とし、傷を刻むという原始的かつ真摯な線描へと回帰。北欧の澄み切った大気や静謐な森の気配を、削り出されたバリ(金属のめくれ)に溜まるインクの滲みだけで表現してみせた。これは山田純嗣という作家が持つの表現者としての振れ幅の広さを象徴する出来事となった。