土と対話し削り出す一期一会の美。陶芸家・井上茂が手掛ける「原土の器」の真価と魅力
見た目の美しさだけでなく、井上茂氏の器が多くの人々を虜にする最大の理由は「圧倒的な使いやすさ」にある。
原土を使った器は往々にして重く、分厚くなりがちだ。しかし、井上氏の器を手にとった誰もが、その「軽さ」に驚く。ろくろの上で限界まで薄く挽き伸ばされたろくろ目、手馴染みの良い縁の立ち上がり。持った瞬間に手指に吸い付くようなフィット感がある。
さらに、重心の位置が徹底的に計算されている。高台(底部の支え)の削り出し方や径の太さを微妙に調整することで、薄手でありながら食卓の上でぐらつかない安定感を生み出している。洗う時、重ねて収納する時、料理を盛り付ける時。あらゆる動作においてストレスを感じさせない設計が施されているのだ。