「3月11日に誕生日が祝えない」当事者の葛藤と新たな心の過ごし方
3月11日という日付が持つ特別な重みは、マスメディア業界が作り出す言説や映像コンテンツによっても補強されている。NHKをはじめとするテレビ各局は、毎年この時期になると特別報道番組や復興の歩みを追う特集を総力で放映する。震災の教訓を風化させないためのジャーナリズムの役割は不可欠であるが、同時にその強烈な映像と音響は、視聴者の心理に深い影響を与える。
映像コンテンツの多様化も進む。動画配信サービスのNetflixでは、震災直後の混乱と人々の生き様を描いた社会派ドキュメンタリーとして名高いドキュメンタリー『311』が配信され、世界的な評価と同時に当時の記憶をリアルに呼び起こす。新海誠監督によるアニメーション映画『すずめの戸締まり』は、震災の傷跡と心の復興をモチーフに扱い、多くの人々にトラウマの記憶と再生への問いを投げかけた。
こうした力強い映像作品群は、集団的トラウマを記憶にとどめる重要な装置である一方で、3月11日生まれの人々にとっては「祝福の感情」を立ち上げる隙間を狭める一因にもなっている。フィクションや社会派ドキュメンタリーを通じて震災の記憶が再生産される日だからこそ、個人的な祝祭の影はより一層濃くなるのだ。