右から左へ受け流した男、ムーディ勝山が辿り着いた逆転劇の真相
だが、彼は腐らなかった。メディア露出が激減するなか、活動の主戦場となったのは全国各地のショッピングモールや地方のイベント会場、そして過酷を極めるロケの現場だった。観客がまばらなステージでも、決して手を抜くことなく白タキシードを着こなし、全力で美声を響かせる。どんなアウェイな空気も一瞬でホームに変える現場対応力は、この泥臭い下積み的な巡業の中で研ぎ澄まされていった。
特筆すべきは、ロケ職人としての覚醒だ。地方局のレギュラー番組や情報バラエティで見せる丁寧な食レポ、一般人への絶妙な間合いのインタビュー、そして突発的なハプニングを笑いに変える反射神経。かつてのヒット曲に頼るだけでなく、平場のトークと実直な立ち振る舞いで現場スタッフの信頼を勝ち取っていった。