シンジから乙骨へ――声優・緒方恵美が切り拓く表現の新たな境界
90年代半ば、社会現象を巻き起こした伝説的なSFアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。主人公・碇シンジに吹き込まれた声は、観客の心に鋭い爪痕を残した。傷つきやすく、拒絶を恐れ、それでも巨大な運命の渦中に投げ込まれる少年の叫び。それは演技という領域を超えた、生々しいドキュメンタリーのようでもあった。
四半世紀以上の時を経て完結を迎えた『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に至るまで、彼女は碇シンジという重厚な存在と向き合い続けた。制作を手掛けた株式会社カラーの庵野秀明総監督らクリエイター陣との綿密なやり取りの中で、過酷なアフレコ現場に身を置き、自らの肉体と精神を削りながら声を吹き込んだエピソードは有名だ。完結編で見せたシンジの成長と救済の表情は、彼女自身の長年の歩みと見事に重なり合い、世界のファンに深い感動をもたらした。