放送9年目にして異例のブーム再燃!『ひよっこ』が今、令和の視聴者に突きつける「温もりの飢餓」と感動の神髄
朝の連続テレビ小説(朝ドラ)といえば、波乱万丈な人生を歩むヒロインの奮闘劇や、歴史的偉人の生涯を描く一代記が定番だった。しかし『ひよっこ』は、そうした「ドラマチックな事件」の連続とは一線を画していた。
主人公・谷田部みね子は、どこにでもいるごく普通の少女だ。特別な才能があるわけでも、大きな野望を抱いているわけでもない。失踪した父を探すために上京し、集団就職で工場働きを始め、やがて洋食屋のホール係として健気に生きていく。物語の中心にあるのは、日々のささやかな喜びや哀しみ、そして周囲の人々との温かな交流だ。
悪人が一人も登場しないのに、どうしてこれほどまでに心を揺さぶられるのか。それは、日常のちょっとしたやり取りや、すれ違いのなかに潜む「人生の機微」を丹念に描いているからだ。人は誰しも、誰かの優しさに支えられながら生きている。その普遍的な事実を、押しつけがましくなく提示してみせた点が、本作の最大の勝因と言えるだろう。