2026年の紙本逆襲:街を埋め尽くす「偶発的出会い」とデジタル疲労の解毒剤
日曜日の午後2時、東京・下北沢の特設会場。雨混じりの肌寒い風が吹く中、入場を待つ長蛇の列ができていた。並んでいるのは、10代後半から20代の若者が大半だ。手にはスマートフォンではなく、すでに会場内で手に入れたと思われる小冊子や文庫本が握られている。
「スマホの画面を見ていると、全部が『広告』か『誰かの狙い』に見えてくるんです」
取材に応じた24歳のIT企業社員は、少し照れくさそうに笑った。「ここに来れば、自分が何を探しているのかすら分からない状態で本を手に取れる。背表紙の掠れや紙の匂い、装丁の手触り。そういう偶然の引っかかりが、今の自分には一番贅沢に感じられます」。
データもこの感覚を裏付けている。出版市場の分析データによると、デジタルネイティブ世代における「紙媒体の自発的購入率」は、2026年を底として急速な回復傾向を示している。効率性を追い求めた結果として訪れた「デジタル疲労」の解毒剤として、フィジカルな本場が選ばれているのだ。