継国巌勝はなぜ黒死牟へ堕ちたのか?縁壱への嫉妬と最期の笛を解く
無限城における最終決戦で、黒死牟は鬼殺隊屈指の精鋭である霞柱・時透無一郎、風柱・不死川実弥、岩柱・悲鳴嶼行冥、そして不死川玄弥の4名と激突します。自らの子孫である無一郎の胴を両断し、玄弥を縦に斬り裂く圧倒的な武威を見せつけたものの、命を賭した猛攻により徐々に追い詰められていきます。
首を刎ねられてなお、無惨と同様に「首の弱点を克服した異形の姿」へと再生を遂げた黒死牟でしたが、柱の刀身に映った自身の姿を見て戦慄します。六つの目を持ち、頭部から牙が生え、刀身が無数の刃で覆われたその姿は、かつて自分が志した「誇り高き侍」とはかけ離れた、ただ生き延びるためだけに執着する浅ましい怪物そのものでした。
「私はこのために数百年の時を生き、仲間を裏切り、鬼にまで成り下がったのか?」――その迷いが生じた瞬間、再生は止まり、肉体は崩壊を始めます。消滅の瞬間、着物の隙間から零れ落ちたのは、60余年前に老いた縁壱が胸に抱き、再会の果てに自らが切り捨てたはずの「あの粗末な手作りの笛」でした。
縁壱は80歳を超えてなお兄を救うために現れ、立ち往生で寿命を迎えた際にも、幼少期に巌勝からもらった笛を肌身離さず持っていました。そして巌勝自身もまた、憎悪し罵倒した弟の形見を、400年以上もの間、己の着物の内側に隠し持っていたのです。言葉では「憎い」「不快だ」と吐き捨てながら、心の最深部では弟の愛を求め、兄としての温もりを捨てきれずにいた事実が白日の下に晒された、涙なしには読めない屈指の死亡シーンです。