山本五十六「やってみせ」全文の真実|人は動かじの続きと現代育成論
ネット上やビジネス書の一部では、「やってみせ」を単なる「精神論」や「根性論の指導法」として紹介する誤解が根強く残っています。しかし、山本五十六の思考様式を丹念に検証すると、極めて緻密な人間理解と心理学的アプローチに基づいていることが分かります。
誤解1:「ほめてやらねば」はお世辞やおだてのことである
心理学におけるアドラー心理学や行動分析学が指摘するように、表面的なお世辞は相手に見透かされ、上下関係の支配ツールとして機能してしまいます。山本五十六が説いた「ほめる」とは、お世辞ではなく「相手の試行錯誤や事実を認め、存在そのものを受け止める(アクノレッジメント=承認)」ことです。
誤解2:「任せる」とは口を出さずに完全放置することである
「任せてやらねば」を「放任」と履き違えるリーダーが少なくありません。しかし、第3節に「見守って、信頼せねば」とあるように、物理的には手を出さずとも、関心を向け続け、何か起きた際には最終責任を上司が取る体制を整えることこそが「任せる」の前提条件です。無関心な丸投げは、部下にとって単なる孤立を生むだけに終わります。
誤解3:リーダーが誰よりもプレイングスキルで勝っていなければならない
「やってみせる」という言葉から、「上司は部下より実務ができなければならない」と思い詰め、プレイングマネージャーとして疲弊するリーダーが目立ちます。しかし、組織が高度化・細分化した環境では、すべての専門知識で部下を上回ることは不可能です。ここで示すべき手本とは、技術そのものだけでなく、「仕事に向き合う姿勢」「他者への敬意」「トラブル発生時の判断軸」といった人間的・組織的態度を含んでいます。