人類が根絶した最悪の感染症・天然痘の真実と再来するバイオ脅威
人類が根絶した天然痘とは、今なお世界最高レベルの警戒を要するカテゴリーAのバイオテロ病原体である。日本でも1976年に定期予防接種が中止されて以降、50歳未満の世代は天然痘に対する免疫を一切持っていない。仮にテロや事故によってウイルスが社会に流出した場合、かつてない速度で感染が拡大し、医療崩壊を招く危険性が指摘されている。
こうした再流行リスクに対処するため、最新のバイオディフェンス戦略が進展している。テコビリマット(TPOXX)などの抗ウイルス薬の備蓄に加え、日本が独自に開発した副作用の極めて少ない細胞培養天然痘ワクチン「LC16m8」や、海外で承認されている非増殖型の天然痘・エムポックスワクチンが戦略物資として位置づけられている。AIを用いた感染拡大シミュレーションや、下水サーベイランスによる早期検知網の整備が進むなど、見えない脅威を封じ込めるための防壁は静かに、かつ強固に張り巡らされている。