夜明けのスキャット誕生秘話|歌詞なし名曲が世界を魅了した真相
長年インターネット上で囁かれている俗説の中に、「作詞が締め切りに間に合わず、スタジオで入れた仮歌のスキャットをそのまま発売した」というものがあります。しかし、当時の関係者証言や制作記録を検証すると、この説は事実と異なります。
実際には、最初から「深夜ラジオ番組のための、言葉を持たないインストゥルメンタル的なBGM」として意図的に制作されたものでした。いずみたくは、深夜のリスナーがパーソナリティの語りや自身の思考を邪魔されないよう、あらかじめスキャットによる歌唱を設計していたのです。
また、「誰でも歌えそうなシンプルなメロディ」という見方も大きな誤解です。『夜明けのスキャット』の旋律は、正確なピッチ(音程)のコントロール、息の長いレガート、そしてクラシック声楽に裏打ちされた頭声発声がなければ、あの澄み切った浮遊感を表現することはできません。由紀さおりの突出した歌唱力があったからこそ成立した、高度な芸術作品でした。