なぜ「累」は今なお語り継がれるのか?『鬼滅の刃』を世界的現象へ導いた“那田蜘蛛山”の真実と、悪役に込められた救済の美学
累というキャラクターの根底にあるのは、あまりにも切ない「家族の絆」への飢餓感だ。生来の虚弱体質ゆえに部屋から出ることすら叶わなかった少年時代。無惨の血によって強靭な肉体を得た代償に、彼は人の心を失い、実の両親を自らの手で殺めるという不可逆の悲劇に直面した。
親が子を殺そうとしたのは、自らの犯した罪を共に背負って死ぬためだった――その真実に気づけぬまま鬼となった累は、強烈な罪悪感と喪失感を埋めるため、他の鬼を集めて「父」「母」「兄」「姉」という配役を与えた。恐怖と力で縛り付ける歪んだ関係。それは彼が必死に模倣しようとした、失われた本物の家族の残像にほかならない。