ひとりぼっちのハブラシ誕生秘話|桜庭裕一郎と長瀬智也の現在地

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名曲『ひとりぼっちのハブラシ』が世に出る契機となったのは、2001年4月期に放送された連続ドラマ『ムコ殿』でした。主演を務めた長瀬智也が演じたのは、世間的には「抱かれたい男No.1」に君臨する孤高のロックスターでありながら、私生活では大家族の新井家に婿入りし、家族のために奔走する熱血漢「桜庭裕一郎」です。ドラマのプロット段階から、劇中で裕一郎がアコースティックギターを爪弾きながら歌う重要な劇中歌の制作が求められていました。

そこで白羽の矢が立ったのが、当時モーニング娘。の国民的プロデュースワークで音楽界の頂点に立っていたシャ乱Qのつんく♂でした。関係者の証言によると、フジテレビの制作陣からの「ドラマのキャラクターが本気で大衆の胸を打つ、泥臭くも切ないアコースティックナンバーを」という熱烈なオファーを受けたつんく♂は、長瀬智也本人の持つ骨太なロック魂と、桜庭裕一郎という架空のスターが抱える孤独のコントラストに強いインスピレーションを感じたといいます。

当時、つんく♂は自身の公式ライナーノーツや音楽特番のインタビューにおいて、「単なる劇中歌の依頼ではなく、長瀬君という稀代の表現者が歌うからこそ成立する、情けなくてリアルな男の未練をメロディに落とし込んだ」と述懐しています。レコーディング現場では、技巧的なボーカルディレクションよりも、長瀬の感情剥き出しの歌唱表現が最優先されました。架空の劇中歌という枠組みを超え、生身のシンガーソングライター・桜庭裕一郎の魂が吹き込まれた瞬間でした。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。