猫が蚊に刺されるとどうなる?命を脅かす病気とNgな虫除け対策
猫が蚊に刺されることの真の恐ろしさは、皮膚炎そのものよりも体内で進行する不可逆的な病態にあります。臨床獣医学において特に警戒されているのが「猫フィラリア症」と「蚊刺過敏症(蚊アレルギー)」です。
「フィラリアは犬の病気」という認識は重大な誤りです。猫も犬糸状虫(フィラリア)を媒介する蚊に吸血されることで感染します。猫はフィラリア本来の好適宿主ではないため、体内に侵入した幼虫の多くは肺動脈に到達する過程で死滅しますが、この死滅した幼虫に対する激しいアレルギー・免疫応答こそが猫の肺と血管を破壊します。
この病態は「HARD(猫糸状虫随伴呼吸器疾患)」と呼ばれ、咳、喘鳴(ゼーゼー音)、呼吸困難、嘔吐といった喘息に酷似した症状を引き起こします。さらに恐ろしいのは、心臓や肺動脈に成虫がわずか1〜2匹寄生しただけでも血管が閉塞し、前兆となる症状が一切ないまま急性ショックによる突然死を招く点です。猫の心臓は犬に比べて非常に小さいため、極めて少数の寄生であっても致死率は跳ね上がります。
もう一つのリスクである猫の蚊刺過敏症(蚊アレルギー反応)は、蚊の唾液中に含まれるタンパク質成分に対するI型およびIV型のアレルギー反応です。蚊に刺されてから数時間から数日以内に、鼻梁や耳介、眼窩周囲に重度の好酸球性プラークや多発性丘疹、痂皮(かさぶた)が形成されます。重症例では組織が自壊して潰瘍化し、慢性的な肉芽腫へと移行します。
動物病院における蚊刺過敏症の治療では、掻破による自傷を防ぐためのエリザベスカラー装着に加え、過剰な免疫反応を鎮静化させる副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン等)や抗ヒスタミン薬の内服、二次感染を防ぐ抗菌薬の投与が標準プロトコルとして行われます。