ポニョが宗介を好きな理由とは?裏設定と二人のその後・結婚の真相
ポニョの素性を追う上で見落とせないのが、父フジモトが執拗に呼び続ける本名「ブリュンヒルデ」の存在です。この名は、リヒャルト・ワーグナーの楽劇でも名高い北欧神話の半神ワルキューレ(戦乙女)の筆頭に由来します。神々の父ウォータンの命に背き、人間の英雄を愛したがゆえに神性を奪われ、眠らされて人間の女性へと堕とされる悲劇の乙女。宮崎駿監督はこの古典的モチーフを、5歳の少女の物語に驚くほど忠実に重ね合わせています。
ポニョが人間になった直接の引き金は、宗介の指の傷から流れた人間の血液を舐めたことによる生体変化です。フジモトが長い年月をかけて海水を精製し蓄えていた「生命の水」の貯蔵庫を破裂させ、莫大な古代魔法を取り込むことで、彼女は無理やり人の形を手に入れました。しかし、この進化は無償の奇跡ではありませんでした。
母であり海の神であるグランマンマーレと宗介の間で交わされた試練の約束。それは「宗介が、魚のポニョも半魚人のポニョも人間のポニョも、すべて丸ごと受け入れられるか」という過酷な問いでした。もし宗介の心が一度でも揺らげば、ポニョは海の泡となって消滅するというアンデルセン童話『人魚姫』直系の掟が敷かれていたのです。ポニョが人間になる道を選んだのは、魔法という絶対的な力を完全に捨て去り、脆弱な一個の生物として宗介と同じ時間を生きるという、命を懸けた退路のない決断でした。