甲子園を揺るがした5連続敬遠の真相!帰れコールと勝負の美学
嵐のような騒動の渦中にありながら、誰よりも冷静だったのは当事者である松井秀喜自身だった。5打席すべてで勝負を避けられ、最後の打席でも感情を露わにすることなく、淡々と走者としての役割を果たそうとした18歳の姿は、観る者に強烈な印象を残した。
試合後のインタビューでも、悔しさを滲ませるチームメイトの横で、松井は相手の作戦を素直に受け止め、馬淵監督や明徳義塾バッテリーを責める言葉を一切口にしなかった。バットを一閃させることなく、ただ静かに一塁へ歩き続ける姿によって、松井は打撃以上の「怪物としての器」を証明してみせたのである。
この夏の出来事は、松井を悲劇の主人公にするどころか、日本中がその人間性と精神的成熟を称賛するきっかけとなった。後に読売ジャイアンツの主砲となり、ニューヨーク・ヤンキースでワールドシリーズMVPに輝く松井の不動心は、甲子園のあの灼熱の打席ですでに完成されていたと言っても過言ではない。