光と記憶を刻むガラス作家・五十嵐桃子の軌跡:キルンキャストの美学と静寂の造形
五十嵐桃子の表現のルーツは、幼少期を過ごした新潟の豊かな自然景観と雪国特有の静謐な色彩にある。冬の窓越しに見るかすんだ景色。差し込む光が雪面で柔らかく屈折する現象。こうした視覚体験が、彼女の感性に深い足跡を残した。
ものづくりへの関心は自然な流れとして芸術の道へとつながる。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科に入学した五十嵐は、ガラスという素材の持つ多様性に強く惹きつけられた。激しい炎と熱によって刻々と形を変える液体から、冷却されて冷たい硬度を持つ固体へと変化する劇的なプロセス。その中で彼女が選択したのは、吹きガラスのようなスピード感溢れる動的な手法ではなく、時間をかけて型の中で熟成させる「キルnキャスト(鋳造)」であった。
卒業後も大学の研究室助手として残り、素材の物理的特性と表現の極限を追求。制作技術の精度を高めると同時に、自らの表現テーマである「記憶と光の視覚化」を深めていった。